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【Bリーグ】岡田侑大(島根)の凄さ ステップで切り裂き勝負所で決める/ディフェンダー田代直希「日本一のスキルを持ってる」金近廉「1対1で点を取りきれる選手はそういない」

【Bリーグ】岡田侑大(島根)の凄さ ステップで切り裂き勝負所で決める/ディフェンダー田代直希「日本一のスキルを持ってる」金近廉「1対1で点を取りきれる選手はそういない」
Scene|わずかな“間”で勝負を決める

島根スサノオマジックの司令塔・岡田侑大。
そのプレーはリズムとタイミングの芸術だ。相手の重心を読むようにステップを刻み、わずかな“間”のズレを突いて流れを変える。ドライブ、クロス、そしてステップバック3ポイント、どの動作も彼自身の呼吸の中で構築されている。

2025-26シーズン、ここまで平均15.3得点、5.0アシスト、2.7リバウンド。FG成功率41.6%、3P成功率32.6%、FT成功率75.0%。岡田は、日本人トップスコアラーの一人として、富永啓生(北海道)、安藤誓哉(横浜BC)と並び、チームの中心に立つ。得点力と同時に、試合のテンポを支配する判断力。岡田の存在は、数字以上に“空気”を変える力を持っている。

Moments|“読まれても外す”スキル

対峙する選手たちは、口を揃えて岡田の「厄介さ」を語る。千葉ジェッツのリーグ屈指のディフェンダー・田代直希は、その駆け引きの深さをこう表現する。

「岡田選手は、タイミングをずらすのが非常にうまくて。ドリブルのリズムや体の動きで何をしてくるかはある程度読めるんですけど、彼はそれを全部キャンセルしてくる。僕が“ドライブに行かせたい”と思っても、次の瞬間にはステップバックで来る。逆に“タフなスリーを打たせよう”と思っても、切り替えて中へ入ってくる。どれだけ岡田選手のリズムに引っ張られずに、自分の間合いを保つかが本当に難しい。あのスキルは、日本一だと思います。

さらに、ディフェンダーとしての本音をのぞかせながら笑顔で続けた。

「全然楽しくないですよ。しんどいです(笑)。タフなスリーを打たせても決めてくるので、“やられた!”って感じです。ディフェンス泣かせで、もうマッチアップはしたくないです。」

田代はBリーグを代表するディフェンダーの一人だ。その彼をして「日本一のスキル」と言わしめる岡田侑大のオフェンス力。読まれても、外す。誘導されても、切り返す。

相手が“次”を読んだ瞬間、すでに別の選択肢が始まっている。岡田のプレーには、反応ではなく“先読み”の連続がある。

そのリズムの妙は、金近廉もまた身をもって体感している。
日本人で、あれだけ1対1で最後まで点を取り切る選手はなかなかいないと思います。止めたと思っても、もう一歩中に入られてレイアップまで持っていかれたり、ステップバックの3ポイントを打たれたり。本当に苦しめられました。ああいう場面で決め切れる力はすごい。僕自身も、ああいう駆け引きや強さを自分の武器にしていきたいと思いました。」

田代が“ディフェンス泣かせ”と語り、金近が“止めたと思っても抜かれる”と表現する。

それは同じ千葉の主力2人が認める、揺るぎない評価だ。岡田の動きは、相手を一瞬止めるのではなく“考えさせる”。その思考の遅れの中で、すでに次のステップへ移行している。

 

Beyond Game①|20歳の原点、そして今へ

岡田侑大がまだ20歳、特別指定選手だった頃。
Jbasketインタビューで、彼はこんな言葉を残している。

「リングに積極的にアタックすることを意識していきたいです。20歳らしく、ルーキーらしくミスを怖がらずにやっていきたいです。高校と大学でも自分はピック&ロールを得意としているので、とにかく積極的にやっていきたいです。」

当時、大学を辞めてBリーグに飛び込むことはまだ珍しかった。その決断の背景には、彼自身の覚悟があった。

「僕が成功しなかったら、こういう選手が出てこないと思うので、責任感とプライドを持って頑張っていきたいです。」

あの言葉から数年。岡田は実際に、若い世代がプロへ挑戦する道を切り開いてきた。
そして今、その覚悟が島根で形となっている。

Beyond Game②|勝負強さがチームを導く

11月5日、試合後に聞いた。
岡田はいつも通り冷静に語った。

J:“試合をつくる”ところと“得点をする”ところどんな意識ですか

岡田:
「今日は点を取りに行く場面ははっきりしていたと思うんですけど、ゲームをつくるという面ではまだターンオーバーもあり、ボールの散らし方としても最悪のゲームだったと思います。どれだけステップバックの3ポイントを決めても納得いかないですし、最近リム回りでのフィニッシュの精度が欠けているので、そこをもっと大事にしたいです。」

彼にとって、得点は目的ではない。
流れをつくる“手段”であり、チームの呼吸を整える“きっかけ”だ。

J:スタッツが良くても納得できない瞬間とは

岡田:
「自分たちが勝っている時はアシスト数が多いですし、自分が最初のきっかけになれている時は、多少シュートが外れていてもフラストレーションはたまりにくいです。でも、きっかけをつくれていない時は、どれだけ決めても納得いかないんです。」

この言葉に、岡田侑大という選手の本質がある。個の強さと、チームバスケットの両立。スコアラーでありながら、常に“流れ”を最優先に考える。

 

島根スサノオマジックの攻撃は、岡田がステップを踏むその瞬間に動き出す。一歩で相手のリズムを奪い、もう一歩でチームのテンポを整える。彼の動きにはリズムがあり、間があり、情感がある。

試合の終盤、静かにボールを持つ姿に会場が息を呑む。
ステップで切り裂き、スリーで締める。
歓声が爆発する瞬間、岡田は感情を見せない。その冷静さの裏に、チームを勝たせる気持ちが宿っている。岡田侑大は、スコアラーであり、アーティストでもある。そのリズムと判断力が、島根を導き、Bリーグの未来を変えていく。

 

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Jbasketライター

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