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【ウインターカップ|DAY4】福岡第一が困難を乗り越えてクォーターファイナルへ  宮本聡・宮本耀/井手口孝コーチの想い

【ウインターカップ|DAY4】福岡第一が困難を乗り越えてクォーターファイナルへ  宮本聡・宮本耀/井手口孝コーチの想い

男子3回戦 福岡第一が正智深谷を82-59で下し、ウインターカップ・ベスト8進出を決めた。

正智深谷59
18 1st 21
福岡第一82
11 2nd 18
21 3rd 19
9 4th 24

ボックススコア

試合序盤は正智深谷が加藤駿を起点に主導権を握ったが、福岡第一は宮本聡・宮本耀のツインズが試合の流れを整え、藤田悠暉が試合を通してチームを支えた。1Qを21-18とリードすると、2Qには強度の高いディフェンスで相手を11得点に封じ、39-29と2桁差をつけて前半を折り返した。

後半は正智深谷の粘りで一時は1桁差まで詰め寄られたものの、藤田が3Qに11得点を挙げるなど要所で得点を重ね、流れを渡さず。山口銀之丞、崎濱秀寿のガード陣が交代でコントロールし、チームとしての安定感を保った。

4Qには堅守速攻が一気に加速。トンプソン・ヨセフハサンの3ポイントなどで点差を広げ、終盤まで主導権を譲らず23点差で試合を締めくくった。
藤田はチーム最多25得点を記録し、ディフェンスやリバウンドでも存在感を発揮。206cmセンターのシー・ムサが不在というアクシデントを乗り越え、準備と想いの強さを内容と結果で示した福岡第一が、クォーターファイナルへと駒を進めた。

チームの中心となっている2人に
試合後に想いを聞けた。
宮本聡・耀(福岡第一)

J: しっかり勝ち切りましたが、勝つことが前提だった中で、どんな入り方を意識していましたか。

宮本聡
「試合前に原田先生から話があって、もちろん目標は優勝することなんですけど、本当に目の前の試合に120パーセントを出さないと、自分たちは強いチームじゃないので勝てない。
まずはこの試合、自分たちの試合にしっかり向き合って、正智深谷さんに対して戦おうという話をして、今日の試合に臨みました。」

J: 最初は少し硬さも見えましたが、プレッシャーの中でどのように対応していたのでしょうか。

 

宮本耀
「チームとして主力が離脱して、その中でまたチームを作らないといけない状態で、トップリーグでも大敗して、なかなかいい練習もできなかった。
このウインターまでに、いい状態に持ち込むことがあまりできなかったんですけど、それでも1試合1試合、本当に成長していくことが大事だと思っていて。
初戦から苦しい試合展開が続いているんですけど、その中でもチームで声をかけ合って、一致団結することが一番大事だと思っています。
試合に出ている5人もそうですし、ベンチで声をかけてくれる選手、監督たち、応援席にいる人たちも含めて、すべての力を合わせて、その中で勝ち切っていくことが大事だと思います。」

シー・ムサ不在となってからのチームについて
宮本聡
「本当にここからがスタート、新チームだという気持ちで入りました。予選を勝ち上がって、トップリーグでは3試合大敗して、気持ちの整理が難しかった。
でも大濠戦の後に話し合って、もう一度ここからスタートだと。不満や愚痴もあったけど、それ以上に“やるしかない”という気持ちが大きかったです。
3年生として、日本一になるために今できることをやろうという話をして、このウインターカップに臨みました。
ディフェンスからの速攻は福岡第一の一番大事な部分なので、継続してやっています。オフェンスは留学生がいない分、試行錯誤しながら、アタックするところ、周りを活かすところを意識して取り組みました。」

 

J: もう残り少ない公式戦となりましたが、インターハイがなかったことも含めて、今の心境を教えてください。

宮本聡
「1年生の頃から試合に出させてもらって、去年もスタートでやらせてもらって、入学前は考えもしなかったような場所に今立てている。本当にすべてのことに感謝の気持ちでいっぱいです。
自分と耀の2人という部分もありますけど、それ以上に、たくさんの人に最後は優勝という形で恩返しをしたいという気持ちが強いです。
自分たちがコートに立って、楽しそうにプレーしている姿が、一番たくさんの人に勇気を与えられると思うので、楽しみながら、一戦一戦、優勝に向けてチーム一つになって戦いたいです。」

J: ガード4人(崎濱秀寿・山口銀之丞)で臨むスタイルについて、今はどう感じていますか。

宮本耀
「入学前のジュニアウインターで対戦していて、負けて、そこから同じ高校に入学してきたんですね。ライバル関係がずっとあって、3年間を通して今はチームメイト。
ガードが勝たせないといけないと思っています。
自分たちの調子が悪い日もあれば、他の2人が調子悪い日もある。でも、その中でもチームを勝たせるのがガードなので、ベンチにいても声をかけ続ける。
4人がしっかりコミュニケーションを取れているので、いい形でチームが回っていると思います。」

 

J: ゲームメークと得点する、そのバランス面で意識していることは。

宮本聡
「昨日みたいに周りが当たっていない時は、自分たちが点を取りに行く。
今日のように藤田やトンプソンが当たっている時は、まずチームが勝つために一番いいオフェンスをすることを意識しています。
時間がなくなったり、ピンチの場面で自分たちが締める。
そういった意味では、今日はガードとしてしっかりゲームをコントロールできたと思います。」

厳しい状況を何度も乗り越えるたびに、チームとしての結束を強めてきた福岡第一。
主力離脱や大敗、思うように進まなかった準備期間――決して順風満帆ではなかったが、それでも下を向かず、話し合い、前を向き続けてきた。
個の力だけではなく、声、意志、そして覚悟を積み重ね、一人ひとりが役割を全うしながら、全員の力を一つにして勝ち上がってきた。
このウインターカップで彼らが見せている姿は、まさに“チームで戦う強さ”。
その強さは、本物だ。

 

井手口孝コーチ

J: 試合を通して、絶対に勝つという想いが伝わってきました。

井手口孝コーチ
「相手にはいいシューターがいるので、しっかり守ろうということを、長岡とトンプソンでよく頑張ってくれましたね。」

J: ガード陣の起用方法も厳しくされていますが、どのように考えて対応されていますか。

井手口孝コーチ
「小さいんですけどね。聡と耀(宮本)は生まれる前から一緒だし、寿(崎濱秀寿)と銀(山口銀之丞)は、ずっと中学校から同じライジング(ゼファー福岡)でやっているので、もう何も言わなくてもお互い息が合っている。その分、小さいけどいいですね。4人ですから、20回ファールできますからね(笑顔)。

そう思えばディフェンスの強度は緩めず、思い切っていける。今年は、そういうツープラトン的な起用が、うまく行くときはうまくいく。
まだ昨日、今日と、どっちかがうまくいったり、いかなかったりですけどね。」

今の心境
「まだベスト8なんだなって。長いですね(笑顔)。
どこが来てもここからは強いので、次は帝京長岡さん。しっかり準備して、最終日まで試合をさせてあげたい。インターハイがなかった分、少しでも長くさせてあげたいなと思います。」

ウインターカップの厳しさについて
「ブロックリーグやトップリーグを通しても、いろんなチームが伸びてきていますよね。今日の九州学院戦(鳥取城北 77-76 九州学院)にしても、ああいったゲームが生まれるのも、夏から考えると少し想像できなかった。
そういう面では、それぞれのチーム力が上がって、このウインターカップで全体のレベルが高くなっているのかなという気はします。開志国際もよく頑張っていましたね。」

チームの力について
「まだ僕自身には、彼らの力がどのくらいあるのか、正直わからないところもある。
1回戦からそうですけど、もう負けちゃうんじゃないかという予想と、終わってみれば、ある程度できる子たちだったなという感覚と。
夏がなかったり、スタートは県大会レベルの力なのか、トップリーグの最終戦の力が彼らの力なのか、ちょっと僕にもわからない。でも、どっちも彼らなんですよね。」

 Jbasket視点
チームの不測の事態を含め、さまざまな困難を抱えながらも、井手口コーチと選手たちは一戦一戦を乗り越え、確実に勝ち上がってきた。決して順風満帆ではなかったからこそ、試合ごとに見せる修正力と勝負強さが際立つ。
まだ見えていない部分も含めて、すべてが「今の彼らの力」。その不確かさを受け入れながら、コートに立てば結果を出す。
それこそが、長い歴史の中で積み重ねられてきた福岡第一の強さであり、このウインターカップでも揺るがない理由なのだ。

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