
「最初からディフェンスの強度を高く入ろう、と」
1月8日、代々木第一体育館で行われた天皇杯 ファイナルラウンド クォーターファイナル。シーホース三河は琉球ゴールデンキングスを92-85で退け、5年ぶりのセミファイナル進出を決めた。
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琉球
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85 | 16 | 1st | 27 | 92 |
三河
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| 18 | 2nd | 25 | ||||
| 24 | 3rd | 16 | ||||
| 27 | 4th | 24 |
立ち上がりから主導権を握った三河。
この試合中心にいたのが、ベテラン・石井講祐だった。
1Qから試合を支配したベテランの存在感
三河は27-16と先手を取る。石井は3本の3ポイントを含む15得点を挙げ、攻守で試合の温度を一気に引き上げた。
「直近で琉球さんとやったばかりだったので、その時の日曜日の試合みたいに“最初からディフェンスの強度を高く入ろう”という話をしていました。本当に最初からディフェンスが良く入れたので、それがいい流れにつながったと思います」
ディフェンスから流れを作り、トランジションで得点を重ねる。三河が狙っていた展開を、石井自身が体現した。
ルーズボールと判断力が生んだリード
三河は、2Qに6本の3ポイントを沈め、リードを18点に拡大。その中で石井が強調したのは、トーナメントならではの要素だった。
「トーナメントは、こぼれ球を拾ってつなぐ得点がすごく大事になります。そういう意識を全員が持ってプレーできたのかなと思います」
派手さよりも、流れを切らさない判断。ベテランの経験値が、チームの集中力を支えた。
追い上げを受けても揺るがなかった理由
3Q、琉球の反撃で点差は縮まる。それでも三河は、慌てることなく4Qへ。
「こういうトーナメント形式は好きですね。集中力も高まりますし、リーグ戦とは違う大会として、メンタルを切り替えて臨めると思っています」
スタメンに定着し、安定したパフォーマンスを見せている理由についても、石井は冷静だ。
「チームの中で自分の役割が、だんだん掴めてきている感覚があります。それが結果につながっているのは、いいことだと思います」
“頭を使う”プレーが武器
年齢を重ねても、石井のプレー精度は落ちない。その理由を、本人はこう語る。
「もともと身体能力に頼るタイプではないので、下がり幅も少ない。状況を見て適切なプレーを選ぶのは、自分の強みだと思っています」
この日のカッティングやシュートセレクションも、前回の沖縄での対戦がヒントになっていた。
「前の琉球戦は間違いなくヒントになっています。狙いどころをある程度絞ってプレーしました」
2つのスタイルを使い分ける三河の強み
石井は、ダバンテ・ガードナーとジェイク・レイマンそれぞれの特性について、次のように語っている。
「ダバンテがいる時は、ハーフコートで試合を落ち着かせられるのが強みです。今日みたいに、最後に相手があおってくるような展開でも、丁寧にゲームをコントロールしてくれる」
終盤、琉球が圧力を強める時間帯でも、ダバンテは無理にスピードを上げることなく、確実な判断でオフェンスを整理。試合を“静かに締める役割”を担った。
一方で、「ジェイクは機動力を活かして、どんどん走れる。そういう2つのスタイルのバスケットができるのが、うちの強みなんじゃないかなと思っています」
と、テンポを上げたい局面ではジェイクの推進力が生きる。ハーフコートで落ち着かせる時間と、トランジションで一気に畳みかける時間。その切り替えこそが、今の三河の幅を広げている。
石井が語った言葉は、単なる個人評価ではない。状況に応じて“戦い方を変えられる”こと。それこそが、この日の勝利、そしてセミファイナル進出を支えたチームの本質だった。
次は宇都宮戦へ「このまま勢いに乗りたい」
セミファイナルの相手は、宇都宮ブレックス。
「ディフェンスとルーズボールはブレックスさんの強み。そこに負けないことが大前提です。オフェンスではズレたところを的確に突ければ、チャンスはある。このまま勢いに乗っていきたいです」
経験、判断、そしてチームへの理解。石井講祐の言葉とプレーは、三河が“次の景色”へ進むための確かな指針となっている。
派手なスタッツや一瞬の成功だけでは、大舞台では生き残れない。そう語るかのように、石井講祐のプレーには常に「準備」と「積み重ね」がある。
毎年形を変えながら向き合い続けるシュート、強度を落とさないディフェンス、そして自分の立ち位置を見失わないメンタル。なぜ石井は、年齢を重ねてもなおコートで存在感を示し続けられるのか。その答えは、試合後の言葉の一つひとつに表れていた。




J:シュートスキルについて。毎年新しい形を作られていますが、大舞台で決めきるためのプロセスを教えてください。
石井
「シュートは毎年難しいというか……実際、僕もよくわからないことが多いなと毎年強く感じるので、なかなか「これ」というところに辿り着くわけではないんです。模索しながらも、どちらかというとディフェンスだったりルーズボールから気持ちを入れてプレーした方が、いい感じでシュートに繋がっていくタイプなので、あまり気にせず(無心で)やっているというのが実際のところです。」
J:毎年夏に練習していても「わからない」というのは驚きです。
石井
「突き詰めれば突き詰めるほど難しいというか、毎年、あるいはその日によって変わったりもするので。なんとか自分の完成形を見つけられればいいと思うんですけど、現役中は(完成は)ちょっと無理かな、とも思っています。」
J:「攻めのディフェンス」をキープするスキルやメンタルについて。
石井
「ディフェンスに関しては、相手のシューター、例えば岸本選手や松脇選手といったシュートの上手い選手につくことが多いので、とにかく相手の強みを消すというのを意識しています。こういうトーナメント形式は特に、気持ちで負けないことが大事。相手も激しくスクリーンをかけてきますが、それに負けずにタフにディフェンスすることがチーム全体の士気にも繋がると思っているので、そういう意識でやっています。」
J:どのチームにいても最終的に自分の居場所を作られますが、その原動力は
石井
「自分は身体能力もそこまでないですし、身長も大きくない。学生時代に選抜に入ったこともない。そんな中でもプロでこうしてできているというところを体現して見せることで、今くすぶっている人や、学生の子たちが僕を見て「頑張ろう」と思ってくれる……それが自分の大きなミッションだと思っています。自分がどうありたいかを常に意識してやっています。」
完成形を求め続けながらも、今できる最善を積み重ねる。石井講祐の姿勢は、5年ぶりのセミファイナル進出を支えた三河の強さそのものだ。次なる舞台でも、その一歩一歩が、確かな意味を持って積み重なっていく。

