
課題と希望、その両方を抱えて前へ
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A東京
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80 | 23 | 1st | 15 | 75 |
三遠
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| 21 | 2nd | 20 | ||||
| 17 | 3rd | 21 | ||||
| 19 | 4th | 19 |
4Qに入って、三遠は2ポゼッションリードを奪ったが、試合は終盤で一気に均衡を取り戻す。残り2分48秒。オフェンスは停滞し、一本が出ない時間帯が続く中で、主導権は少しずつ相手へと傾いていった。その中心に立ち、勝負の時間を引き受けていたのが、湧川颯斗だった。
2ポゼッションリードを奪ったものの、ラスト2分48秒で得点が止まった三遠。試合後、湧川颯斗は終盤のオフェンス遂行と、勝敗を分けたポイントについて率直に振り返った。
終盤のオフェンスについて問われると、湧川は「デイビッド(ヌワバ)に任せきりになってしまった」と語る。
「やっぱりデイビッドに任せきりになってしまう場面が多すぎました。結果的に今日は30点近く取っていますけど、日本人選手でも2桁得点を取れる選手が何人かいれば、もっと楽に勝てたのかなと思います。デイビッド頼みにならないように、そこは修正していかないといけません」
個に依存しすぎないオフェンスの構築は、今後のリーグ戦に向けた明確な課題でもある。
「最後、自分もいらないファールをして相手にフリースローを与えてしまったので、時間と点差をもっと意識してプレーしないといけないと感じました」
一方で、リバウンドへの意識については、自身の役割をはっきりと口にした。
「外国籍選手がボックスアウトを頑張ってくれているので、それ以外の選手が頑張れるのは、やっぱりリバウンドだと思っています。リバウンドは自分の強みの一つなので、そこは常に意識していました」



勝敗を分けた場面として挙げたのは、4Qのシーソーゲームの局面だった。
「4Qで競った展開になった時、デイビッドが連続で点を取られた場面ですね。あそこでディフェンスをもう一本引き締めていれば、流れを渡さずに自分たちのペースでいけたと思います。もう一段ギアを上げるべきところで、相手に圧をかけきれなかった。それが敗因だと思っています」
わずかな判断、わずかな強度の差。
その積み重ねが、天皇杯セミファイナルという舞台では明確な結果となって表れた。湧川の言葉には、悔しさと同時に、次へ向かうための確かな課題が刻まれていた。その時、どんな想いでプレーをしていたのか聞いた。
J:4Q早い段階でツーポゼッション差まで持っていけましたが、試合終盤の展開についてどのように感じてプレーしていましたか。
湧川
「ディフェンスとオフェンスの部分で、自分の中でスカウティングを遂行できなかった部分が多々ありました。そこをしっかりやれていれば防げていた点差でもあったので、そこが自分の中での反省点です。」
J:終盤、相手のエースに対して大役を任されていて、実際ギリギリの局面での勝負感というのはどのように感じていましたか。
湧川
「これから上を目指すにあたって、リーグ戦で勝ち星を積み上げていくには、こういう試合が今後も多く続くと思います。
終わってみて思ったのは、本当に『個の力』や気持ちの部分でもっと勝っていかないといけないな、ということです。これからは試合の入りから終わりまで、絶対に負けないようにやっていきたいと思っています。」
J:湧川選手を中心に、若手選手の雰囲気や、今チームとして目指しているところについて教えてください。
湧川
「主力選手がいない中でも、この期間で若い選手たちがしっかりプレーして、僕自身もだいぶ自信がついてきました。主力の佐々木選手、吉井選手、メイテン選手が帰ってきた時に、さらにレベルアップした三遠を見せられると思いますし、去年よりもバックアップメンバーが強力になっていると感じてもらえるはずです。」
続けて、こう語った。
「オフェンス面でもディフェンス面でも、今まではボールを持つと焦ってしまうことが多かったのですが、だいぶ冷静に判断できるようになってきました。状況を見て、正しい判断が徐々にできるようになってきていることが、自信に繋がっています。」
試合後に大野篤史HCはこう話した。
「我慢強く、我慢強く、自分たちの流れが来るまで、選手たちは自分たちのゲームプランを遂行してくれましたし、最後は少し疲労もありましたが、すごくいいファイトだったと思います。また、この経験を彼らの糧にしていければなと思っています」
若手選手に対しては
「若い選手が多いので、すべての経験が彼らの成長につながると思います。良いことも悪いことも、しっかりフィードバックして、彼らの成長、ステップアップにつなげられたらいいなと思っています」
指揮官の言葉もまた、この敗戦を「次につなぐ時間」として捉えていることを示していた。

敗戦は、結果として刻まれた。
だが湧川颯斗の言葉は、ただの反省では終わっていない。終盤で足りなかった判断、強度、そして「勝ち切るための基準」。それらを明確に言語化できていること自体が、次へ進むための確かな前進だ。
主力を欠く状況の中で経験した、天皇杯セミファイナルという緊張感。その重さを引き受け、逃げずに向き合った時間は、必ずリーグ戦へとつながっていく。
湧川が口にした「もう一段」。そのギアを上げ切れるかどうかが、これからの三遠を押し上げる指標になる。悔しさの先に、はっきりとした課題と、確かな手応えがある。その両方を得たことこそが、このセミファイナルで三遠が掴んだ収穫だった。
