
勝ちながら進化するチーム、モーディ・マオールHCが語る
西地区首位、そしてリーグ全体でもトップに立つ長崎ヴェルカ。その現在地の裏には、スタッツや個の力だけでなく、チーム全体を機能させる明確な「設計」がある。その設計図を描き、チームを率いているのが、モーディ・マオールHCだ。
モーディ・マオールは、1985年6月27日生まれ、アメリカ合衆国出身のヘッドコーチ。
イスラエル国内リーグでアシスタントコーチとしてキャリアをスタートさせ、ハポエル・ホロン、マッカビ・アシュドッド、ハポエル・エルサレムといったクラブで経験を積んだ。
2017-18シーズンには、ハポエル・エルサレムでヘッドコーチを務め、若くしてトップカテゴリーの指揮を執る立場を経験。その後、再びアシスタントとして現場に戻り、2019年からはオーストラリアNBLのニュージーランド・ブレイカーズに加入した。
ブレイカーズではアシスタント、アソシエイトヘッドコーチを経て、2022-24シーズンにヘッドコーチを務め、国際色豊かなロスターを束ねながらチームを指揮。選手の役割理解と成長を重視する手腕を磨いてきた。
2024年に長崎ヴェルカのヘッドコーチに就任。
「誰が出ても役割を果たすチーム作り」を掲げ、ローテーションの幅と戦術理解を武器に、長崎の完成度を押し上げている。

この2試合を通して、
マオールHCに聞いた。
J:怪我人もいる中で相手をしっかり抑え、しっかり組めている良いローテーションのポイントというのはどこにあったのか教えてください
マオールHC
「正直に言って、アキル(ミッチェル)は素晴らしい選手で、彼の代わりはいません。
例えばマイキー(川真田)選手が出たとしても、アキルの代わりになるわけではありません。
ただ、今シーズンの強みは、誰が出ても自分の役割を遂行できる形を作れていることです。
今日の試合に関しては、1Q以外は選手たちが自分たちの強みをしっかり生かしてくれました。
今日のラインナップは素晴らしかったと思います。
個人の話になりますが、ジャレル(ブラントリー)のプレーはオフェンス面で本当に素晴らしかった。
9アシストという数字だけでなく、スタッツに表れない部分での貢献が大きい。
ポストアップ、シュート、ドライブと、さまざまな形でオープンを作ってくれました。今日の彼のペースメイクは、常に称賛に値するものでした。」
J:以前にお会いした際に、『今シーズンは本当にチームを底上げして、みんなで作っていく』と伺ったのですが、今の話の中で、コーチがイメージする完成度のどれくらいまで今仕上がっている状態か教えてもらっていいですか?
マオールHC
「ラインナップの部分ですね。
相手によってローテーションは変わりますが、変わった時に『何をしなければいけないか』は理解できてきています。
次は『何をやるか』だけでなく、それを『どう遂行するか』が重要になってきます。
このチームはまだ若く、学べることがたくさんあります。
試合が続く中で、相手のディフェンスに応じて対応しなければならないのは簡単ではありません。
武器を増やしながら、その精度を高めていく必要がありますが、そこも含めて成長していると感じています。」
GAME2後
J:コーチ自身は、今日のような試合をどう感じていて、どんな意味があったと考えていますか?
マオールHC
「この素晴らしい試合を、しかもアウェーで勝てたことは非常に大きいです。
今日はなかなか流れが来ない試合でした。外国籍選手がいない状況やファウルトラブルもありましたが、その中で後半に流れを変え、最後までやり切って勝てたことは、経験としてとても価値があります。
今後、同じような苦しい状況になった時に、この群馬戦を思い出すことができる。
ハーフタイムで『あの試合を覚えているか』と話せることは大きい。この勝利は、チームに自信を与えてくれるものでした。」
マオールHCは最後に、必ず「オツカレ!」と声をかけてくれる。気迫が伝わる指揮官でありながら、その一言が親しみも感じさせる存在だ。
スタッツが証明する、長崎ヴェルカの完成度
2025-26シーズンのスタッツを見れば、長崎ヴェルカが西地区首位に立つ理由は明確だ。このチームの強さは、感覚や勢いではなく、数字として裏付けられている。
まず際立つのは、リーグトップの攻撃力。
平均93.0得点(リーグ1位)に加え、FG成功率47.6%(2位)、3P成功率38.5%(1位)。
高得点でありながら確率も高い。長崎のオフェンスは「打つ量」ではなく、打つ質で相手を上回っている。
この効率を支えているのが、リーグ最多の平均23.4アシスト(1位)。スタンリー・ジョンソンの得点力、ジャレル・ブラントリーの展開力、馬場雄大やイ・ヒョンジュンの判断力が噛み合い、ボールが止まらない。
ディフェンス面でも、長崎はリーグ屈指。
平均9.26スティール(リーグ1位)が示す通り、積極的なプレッシャーから流れを引き寄せている。
個人成績を見ても、役割分担は明確だ。
得点はスタンリー・ジョンソン、
リバウンドはアキル・ミッチェル、
アシストはジャレル・ブラントリー。
誰か一人に依存しない、構造として点が取れるチームであることが分かる。
加えて、イ・ヒョンジュンの高確率な3ポイントがスペーシングと得点効率を押し上げ、馬場雄大のスピードと判断力がトランジションと展開力を加速させる。
それぞれの強みが噛み合うことで、長崎のオフェンスはより立体的なものとなっている。
結果として、長崎は33勝6敗、勝率.846で西地区首位を快走中。数字が語るのは、完成度。
今季の長崎ヴェルカは、スタッツそのものがチャンピオン候補であることを証明している。
誰がコートに出ても役割を果たし、状況に応じて「何をすべきか」を理解するチーム作り。モーディ・マオールHCの言葉からは、学びと成長を積み重ねていく姿勢が一貫して伝わってくる。
まだ発展途上でありながら、結果を出し続けている長崎ヴェルカ。その強さの根底には、選手を信頼し、思考する集団へと導く指揮官の存在がある。
このチームは、勝ちながら進化している。




