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【Bリーグ】辻直人(群馬)自分の信じるバスケットに生き方を貫く強さのシューター/Bリーグの10年象徴する存在

【Bリーグ】辻直人(群馬)自分の信じるバスケットに生き方を貫く強さのシューター/Bリーグの10年象徴する存在

ベテランの域で見せる 真のシューターの価値

群馬クレインサンダーズは今季、東地区で4勝5敗のスタート。
開幕から接戦が続く中でも、辻直人は静かにチームの屋台骨を支えている。
中村拓人、ブラックシアー・ジュニアといった新戦力が加わり、カイル・ミリングHCのもと「優勝を狙えるチーム力」を手にした今シーズン。
だが、勝ち切るための“あと一歩”をどう詰めるか、その問いの中心にいるのが、この男だ。

■凄さ:変わらない“決定力”と、時を重ねて増した“洞察力”

辻直人の3ポイントシュートは、キャリアを重ねてもなお鋭い。
昨季はB1全体で成功率2位を記録。
シーズンを通して波が少なく、打つべき瞬間を知る職人の精度。
まさに「タイミングを支配するシューター」だ。

10月25日の琉球戦GAME1では、勝負どころで沈めたクラッチスリーがチームを救った。
その瞬間、会場の空気が変わる。
ベテランになっても、いや今だからこそ決められる“経験に裏打ちされた一発”だった。

「久しぶりにおいしいところを持っていけた。
こういう仕事をすることで、自分の価値をまだまだ示せると思う。」

この言葉の裏にあるのは、自身への誇りと、次の世代への示唆だ。
若手が多い群馬の中で、辻の存在は“勝負の温度”を一定に保つ軸。
チームにリズムと安心感を与える。
シュートを決めること以上に、“チームを整える力”こそが彼の凄さだ。

■課題:打つ勇気、守る継続。40分を支配するために

本人も自覚しているように、課題は“継続”と“判断”。
10月18日の千葉J戦では、前半で2本連続スリーを決めながら、後半はアテンプトが激減。
「もう少し早い段階で打てていたら」と語るように、チームバランスを意識するあまり、自らのリズムを抑えた。

「(細川)一輝が当たっていたし、僕も同じように打つとバランスが崩れる。
でももう少し早く打っていれば、違う展開にできたかもしれない。」

チームを俯瞰して動くがゆえの葛藤。それでも、辻が“自ら流れを動かす瞬間”は、群馬の強さを象徴する時間帯でもある。

また守備面では、渡邊雄太とのマッチアップで見せた課題を率直に受け止めている。

「後半ファウルが増えたり、ヘルプに行きすぎた場面もあった。
チームとしてディフェンスの強度を40分間続けないと。」

40分を支配するための“細部への意識”。
ベテランの修正力こそ、群馬の完成度を押し上げる鍵になる。

 

スペシャルインタビューはJbasket AND1にて公開中

J:激しい戦いを終えて

J:スモールラインナップで感じていることは

J::渡邊雄太選手へ気迫のディフェンス含めて、今、何を感じてされてますか

J3ポイント後のセレブレーションが大きいともっとみんなが見やすいのかなと

J:全国の辻直人ファン、バスケットファンへ

辻直人(群馬) 誇りを貫き、ベテランになっても脅威で居続けるシューター/Jbasketインタビュー
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■群馬の強さと改善点:多彩なタレントを“噛み合わせる”時間

今季の群馬は、個の能力が際立つチームだ。
中村拓人のスピードと視野、ブラックシアー・ジュニアのパワーと柔軟性、細川一輝のスコアリングセンス。だが“強いチーム”になるためには、個の融合が不可欠だ。

10月25日の琉球戦での勝利は、その兆しだった。
これまで茨城、千葉との接戦を落とした“終盤の詰め”を乗り越え、最後まで集中を切らさなかった。

「終盤で勝ち切れなかった試合を断ち切れた。
強豪相手にやれたことはチームにとって大きな自信になった。」

この一勝が、単なる白星ではなく大きな一歩になった。
勝ち切る姿勢、耐える時間、判断の共有。
HCミリングが掲げる「成長を重ねて終盤に最強になるチーム作り」が、少しずつ現実になり始めている。

■Jbasket視点:辻直人という存在が、群馬の“成熟”を形にする

辻直人は、ただのシューターではない。
試合を読む力、空気を変える一撃、若手に背中で見せる姿勢。すべてがチームの成熟を促す存在だ。

コートの外でも、社会貢献活動「スリーピース」など、プレー以外の面でもリーダーシップを発揮している。それは、群馬が目指す「地域と共に成長するクラブ」の象徴でもある。

このチームは、まだ発展途上だ。
だが、辻直人がいる限り、群馬は必ず“勝ち方”を知るチームになる。静かな炎のように、彼の矜持がチームの未来を照らしている。

辻直人の代名詞となっている3ポイントシュート。Bリーグでも素晴らしい結果として現れている。

1位 富樫勇樹(千葉J)1202本
— 歴史を動かす小さな巨人。Bリーグ史上初の1200本超え。

2位 安藤誓哉(横浜BC)1007本
勝負の瞬間に迷わず放つスリーが勝利を呼び込む。

3位 辻直人(群馬)991本
美しいフォーム、静かな闘志。Bリーグ黎明期から“信頼”でチームを支えてきた職人が、ついに歴代3位へ。今もその眼差しはぶれない。

4位 岸本隆一(琉球)984本
沖縄の魂、勝負を決める一発でチームを導く。

5位 金丸晃輔(佐賀)886本
年齢を重ねても研ぎ澄まされていくシューターの美学。

📊 2025年10月28日時点/B.LEAGUE公式データ

🏀 Jbasket視点 辻直人という存在とは

B.LEAGUEは創設から10年目を迎えた。
その歴史の中で積み重ねられた無数のスリーの中に、“辻直人”という名が深く刻まれた。

広島、川崎、そして群馬へ。どの時代も彼は、勝負を決める瞬間を恐れず、ただ自分の信じたフォームを貫いてきた。

今季もなお、数字を超えて存在感を放つ。
その一投には、キャリアの重みと、チームを鼓舞する静かな熱が宿っている。
辻直人が放つスリーは、記録ではなく“文化”として、Bリーグの物語に刻まれていく。

また、その3ポイントを決める辻直人の社会貢献活動もある。「スリーピース」は、3ポイント成功1本につき3333円を積み立てる仕組み。
2024-25シーズンは127本成功し、試合会場での募金と合わせて計78万2818円を寄付。
寄付先は群馬県立小児医療センターで、入院中の子どもたちへの玩具や備品購入に活用された。

自身の代名詞“3ポイント”を通して、コートの外でも笑顔と希望を届ける辻直人らしい活動だ。その一投、その行動が、バスケットボールの価値を静かに広げ続けている。

 

キャリア
洛南高等学校(京都)
全国屈指の強豪・洛南高校でエースとして活躍。後輩の比江島慎(現・宇都宮ブレックス)らとともにウインターカップ連覇を果たす。

青山学院大学(2008–2012)
関東大学リーグ、インカレ優勝に貢献。正確な3ポイントと高いバスケットIQで、学生No.1ガードの呼び声を得る。

東芝ブレイブサンダース/川崎ブレイブサンダース(2012–2021)
JBL、NBL、Bリーグのすべてを経験。
JBL2012–13優勝、ベスト5選出、天皇杯2年連続優勝(2016・2017)。
勝負強さとリーダーシップで川崎の黄金期を支え、比江島らとともに日本代表でも世代を牽引した。

広島ドラゴンフライズ(2021–2023)
チームの再構築期を支え、若手の成長を促す精神的支柱としてプレー。

群馬クレインサンダーズ(2023–)
経験と洞察力でチームのバランスを整え、若手の指針となるリーダーとして活躍中。

日本代表歴🇯🇵
日本代表選出(2013・2014・2015)
ウィリアム・ジョーンズカップ 2013(台湾)出場
FIBAアジアカップ 2014・2018 出場
アジア競技大会 2016 出場(リオ五輪最終予選メンバー)
FIBAワールドカップ アジア予選(2018–2019)出場

🏆 主な受賞・実績
JBL 優勝(2012–13/東芝)
NBL ベスト5(2013–14)
天皇杯 2年連続優勝(2016・2017/川崎)
Bリーグ通算3P成功数:歴代3位(991本/2025年10月28日現在)
社会貢献活動「スリーピース」主宰

 

 

 

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