北海道で再び、挑戦の幕が上がる
開幕5試合を終え、チームは3勝2敗。今シーズン富永はBリーグで注目される選手ナンバーワンだ。アウェイで乗り込んだ最後の群馬戦。この群馬戦では、かつてアンダー世代で共にプレーした中村拓人との対戦も実現した。同じ地区で高校ぶりの久々の再会に、富永の表情には懐かしさと同時に、競い合う者としての緊張感が漂う。この日も徹底され続けるフェイスガードで、スリーポイントを封じられた。
試合結果は、群馬99ー72北海道、群馬のホームで大きくリードされての敗戦。富永自身は(23分出場・17得点)数字の上では悪くない。だが、徹底されたディフェンスに得意のアウトサイドを見ることが出来なかった。
試合後、富永の口から出たのは厳しい言葉だった。「相手の3ポイントにやられてはいけないと話していたのに、前半から気持ちよく打たせてしまった。情けない試合をしてしまったと思います。」と満足はない。
それは、自分の得点だけでチームを評価しない“スコアラー”しての意地でもある。
“勝たせるスコアラー”として
富永啓生を語るうえで、得点力は避けて通れない。リズムを掴んだときの爆発力、わずかなスペースを逃さない瞬発的な判断力。それは、アメリカで鍛え上げた最大の武器だ。「自分が点を取ることでチームが勢いづく。そこは常に意識しています。」スコアラーである以上、決めることが責任。どのチームもこの武器を潰してくることはわかっている。今の富永は、その“先”を見据えている。1本のスリーがチームを動かし、1本のドライブが会場の空気を変える。“点を取る”という行為を、“チームを勝たせるエネルギー”に変えること。それが、彼の新たなテーマだ。「自分が決めることでチームのリズムを作る。それが今の自分の役割だと思っています。」
点を取るだけじゃない、チームを動かす存在へ
富永のシュートには、勢いがある。だが今季、その勢いはチーム全体に波及している。彼の1本でベンチが沸き、チームメイトの足が自然と前へ出る。得点でリズムを刻み、ディフェンスでも声を出し、チームを鼓舞する。“勝たせるスコアラー”の姿としてチームにエナジーを与える。
富永の覚悟は、こうした言葉にもにじむ。「まずはレバンガをCSに連れていくこと。チームを勝たせることに集中しています。」数字のためではなく、勝利のために打ち続ける。その1本1本が、北海道の未来を照らしていく。情けない試合はしたくない。勝ちたい、ではなく“このチームを勝たせたい”。その想いが、彼のプレーを突き動かす。
次なる物語へ富永啓生の挑戦は、まだ始まったばかり。レバンガ北海道を勝利へ導くその姿勢は、Bリーグの新たな象徴となりつつある。彼が次に見せる“勝たせるプレー”をそして成長の一瞬、群馬戦を JbasketAND1 でさらに深く追いかけていく。