
開志国際は激闘の末、延長に突入。最後は福大大濠に惜敗/富樫英樹コーチと高橋歩路、試合後に流した涙の理由
注目カードとして大きな期待を集めた一戦は、会場の熱量が最後まで落ちることのない大激戦となった。最大18点差を追いかける展開となりながらも、開志国際が粘り強く食らいつき、試合は延長戦へ。高校バスケ最高峰の舞台で、両校がすべてを出し尽くした末、福大大濠がわずか4点差で激闘を制した。
GAMEサマリー
📅12/26(FRI)男子3回戦
開志国際 75-77 福大大濠(延長)
第5クォーター 残り時間(0:0)
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開志国際
75
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13 | 1st | 17 |
福岡大濠
77
|
| 15 | 2nd | 28 | ||
| 29 | 3rd | 16 | ||
| 15 | 4th | 11 | ||
| 3 | OT1 | 5 |
序盤から主導権を握ったのは福大大濠。白谷柱誠ジャックのインサイドでの存在感と、本田蕗以の鋭いドライブを軸にリードを広げ、一時は最大18点差をつけた。
しかし、ここから開志国際が真価を発揮する。3年生の北村優太、キング太が中心となり、ディフェンス強度を一段引き上げて反撃。我慢強くボールを動かしながら得点を重ね、試合は終盤にかけて一気に緊迫した展開へと変わっていった。第4クォーター終盤、開志国際は執念の追い上げで同点に追いつき、勝負は延長戦に突入。
最後は福大大濠が決定力の差を見せ、接戦をものにした。
敗れはしたものの、その戦いぶりは強烈な印象を残した。怪我人を抱え、万全とは言えない状況の中でも、誰一人として諦めることなく、優勝候補の福大大濠を延長戦まで追い詰めた。
北村優太はゲームメークと得点の両面でチームを牽引し、19得点7アシスト。キング太もインサイドで体を張り、19得点10リバウンドとダブルダブルの活躍を見せた。高橋歩路は厳しいマークに苦しみながらも14得点を挙げ、要所で存在感を示した。
最大18点差からのカムバックは、開志国際が積み重ねてきた走力、我慢強さ、そして3年生の覚悟の表れだった。結果以上に、この舞台で示した「食らいつく姿勢」は、確かに観る者の心を打った。


試合後Jbasketインタビュー🎙️
高橋歩路(開志国際・2年)

J:本当すごい試合でした
高橋
「自分は何もできなかったし、エースとしてチームを勝たせることができなかったんで、自分は本当に情けない試合をして申し訳ないです、、、(涙)。」
J:ウインターカップに向けてチームに、下級生ながらエナジーを吹き込んでいて、どんな想いで臨みましたか
高橋
「大会前はいろいろとチームでもトラブルがあったり、体調不良だったり、怪我人もいて、本当にチームは苦しい状況だったんですけど、その人たちの想いも自分が背負って、チームを勝たせなきゃいけない、エースにならなきゃいけないっていう思いでしたが、
最初からシュートがなかなか決まらず、それでもずっと3年生が声かけを続けてくれたんですけど、弱い自分がいて、前を向き続けることができなかったので、試合中の弱さっていうのは、もっと強くなって頑張って改善しないといけないと思います。」
J:試合では、歩路選手にハードに当たってくることは分かった上で、どう対応していましたか
高橋
「ハードに当たってくることは分かってたんで、自分としてもシュートもある程度入ってましたし、チームも自分にボールを集めてくれてたんで、決め切ることはできてたんですけど、大濠さんも経験を積んできて強いので、後半にかけるにつれて、自分たちの対策だったり対応っていうのが、大濠さんの方が一枚上だったかなっていう印象はあります。」
J:コーナーやペイントでポジションを取って攻め続けていましたが、そこは今年強くなったところですか
高橋
「今年はインサイドで点を取るっていうところでも成長した部分で、もっともっとやらなきゃいけなかったんですけど、どうしても決め切ることができず、最後までゴールに向かうことができなかったので。そこはまだまだだったと思ってます。」
J:優勝候補から最大18点差をつけられて、追いついて逆転するところまでいきましたが、どうしてカムバックできましたか
高橋
「ハーフタイム中に富樫先生から『これからだぞ』ってチームに声かけがあって、自分たちはインターハイも出てないですし、タイトルも取ってないので、チャレンジャーという気持ちで向かっていたところで、3年生が3Qの入りからチームを引っ張ってくれたので、3年生には感謝しかないです(涙)。」
J:打ち続けた結果、4Qに決めてチームにエナジーを入れました
高橋
「最後は入ったんですけど、決め切ってこそのエースですし、チームを勝たせてこそのエースなので、2点に詰めるシュートを決めたからとか、そんなんで満足するんじゃなくて、もっと今度はチームを勝たせるシュートを決めるための練習をしなきゃいけないと思います。」
J:その涙は、3年生が今日で終わるっていうところも含めての涙ですか
高橋
「3年生は本当に私生活や練習を含め、すごい引っ張ってくれましたし、本当に自分たちをサポートしてくれたので、3年生の想いを分かってる分、自分が勝たせられなかったっていう思いが込み上げて、、、はい。
今この状況になってしまってるんですけど、この涙を来年は嬉し涙に変えられるように、また1年後に、チームとしても自分としても強くなって、この舞台に帰ってきたいなと思います。」
J:これが開志国際のバスケットだ、というところを教えてください
高橋
「今日の後半は走れてましたし、リバウンドも取れて、シュートも決められましたし、その速いバスケットっていうのは見せられたので、僕たちらしく楽しんでできたんじゃないかなって思います。」
J:バスケットファンへお願いします
高橋
「高校バスケは、他のカテゴリーにはない“唯一無二の存在”だと思ってますし、あの速い展開というのは、高校バスケの楽しみだと思うんです。
自分たちをもっともっと、その高校バスケの魅力を皆さんに伝えられるように、この1年努力していきたいと思いますし、皆さんのご声援とご協力がなければ、自分たちもここまで、その素晴らしい舞台でプレーすることはできないので、これからももっと僕たち高校生を応援してほしいと思っています。」


富樫英樹コーチ(開志国際)

「なんていうのかな、今年はもう勝ち負けより、ベストメンバーでやりたかった、みんなでやっぱりね、ゲームをしたかったっていうのが、、、(涙続く)。
すみません、、、みんなに感謝です。
ほんとによく頑張ったしかないですね。1年間苦しい苦しい時ばかりだったので、次の人生にね、これを繋げてくれればと。あとはこの悔しさを下級生たちが引き継いでくれればなという、そういう気持ちです。
ただ、3年生に勝たせてあげたかった。ほんと3年生いいんですよ。ほんとによかったので、勝たせてあげたかったって思います。」
最大18点差をつけられたところからのカムバックについては「やっぱり3年生ですよ、北村とキング太の3年生のその思いですよ。もうお前ら2人だってずっと言ってたので、よくやってくれました。」と語った。
J:点数をつけられたところから、粘り強く返ってきた、先生が言ったその気持ちと、プラスどういうところですか
富樫コーチ
「うん、歩路のところはキツく来るのはわかってて、『お前ら2人は、絶対やれるはずだから、そこ逃げるな。もうそこは勝負だ』
ってずっとハーフタイムで言ってて、3年生やっぱり頑張ってくれたねって思います。」
J:歩路選手について、大濠相手にあれだけのプレータイム、2クォーター以降のシュートは厳しかったですけど、最後見せてくれたりとか、先生はどんな想いでしたか
富樫コーチ
「歩路はやっぱり今日はちょっと精度は低かったです。うん、やっぱりプレッシャーになるのはあったのかなと思うんですけども。
でも歩路については、もう絶対に激しく来るのはわかってて、その来る中でどうしていくかってのが課題でしょうね。」
J:大濠は抑えないといけないところが多いですね
富樫コーチ
「本田蕗以のドライブ、ドライブって言ってたところ、また右ドライブで最後決められてね。あれはやっぱり決定力の差が出たなって感じてます。」
J:その中でプレータイムも多い中でやり切ったチームについてを
富樫コーチ
「やっぱり1年間走り込みをしてたしね。そのくらいはやってきたけど、ゲームで歩路たちが4クォーター出ることなかったんですよ。
勝負が決まってたので体力がちょっと心配でしたけども。でも本番はやってくれるという感じで見守ってました。」
J:先生も選手たちと一緒にベンチでいつも走られてますね
富樫コーチ
「自然に動くんですよ、すみません。意図的に動いてるわけでなく、体が反応してるんです。すみません(笑顔)。」
J:この一年難しいと伺いました、伸びたところを教えてください
富樫コーチ
「やっぱりね、どんな逆境にあっても諦めなかったっていうのが、私はそこに尽きると思います。負けてもみんな揃ってないし、いつも誰かが怪我してるしね。2ヶ月だけなんですよ。9月中旬から11月の中旬まで。
この2ヶ月だけなんですよ。
たった12ヶ月の間にですよ。正直参りました、はい。でも、子供たちめげずにやってくれたの、本当に3年生に感謝です。」
夏頃のチーム状況については
「インターハイ予選で、いくら怪我と言っても僕らも勝てるかなと思って行ったところ負けたので、あれからね、負けても全然誰も下向かずにね。
怪我から復活したら、よしって感じでね、いいチームになっていったところ、またどうなるかなって、1ヶ月足らずでね、チーム作り上げたんですけども、本当によく頑張ってくれました。」
J:開志国際のバスケット、怪我もある中でもここまで来るのに、先生が大事にしてる、みんなに対して、先生自身も大事にしてるポイントを教えてください
富樫コーチ
「人に愛されるチームですね。人に愛されるチーム、人に愛される人間でなければ、ということを常々言ってるので、毎日の練習をちゃんとしてほしいと。試合で活躍するよりも毎日の練習をちゃんとして欲しい。そして、オフコートを大事にしよう。これが言い続けてる言葉です。
だから『凡事徹底』と、自覚と責任。
今回本当に苦しかったので、3年生に自覚と責任あるのかって言ったら、歩路も3年生じゃないけどね。でも、みんな大したもんです。
みんな大人になりました。」
J:この想いを1、2年生ですね
富樫コーチ
「うん、そうですね。本当に万全な体制で臨みたいです。来年は本当にね。健康第一でね。じゃないと日本一どころじゃないですよ(笑)。」
J:高校バスケの魅力を教えてください
富樫コーチ
「私、今回見てね、ここだと思いますよ。優勝候補の大濠に最大18点差つけられても諦めずに食らいついていく。これがやっぱり高校生のいいところですね。一生懸命じゃないですか!
そして、何が起こるかわからない。これなので、ファンはつくんだと思います、はい。」
Jbasket視点|涙の意味
試合後、言葉を詰まらせた富樫コーチの涙。
そして、エースとして責任を背負い続けた高橋歩路の涙。
そのどちらも、結果以上に「本気で勝ちにいっていた」からこそ流れたものだった。
勝たせてあげたかった3年生への想い。
背負いきれなかった責任への悔しさ。
その感情が交錯した末の涙だった。
結果は敗戦。それでも、最大18点差から延長まで持ち込んだ開志国際の執念は、確かに会場を揺さぶった。
優勝候補に最後まで食らいつき、1秒たりとも諦めなかった姿。この舞台で示した覚悟と悔しさは、次の世代へと確実に受け継がれていく。
高校バスケは、勝者だけの物語じゃない。
この日、確かに心を動かしたチームが、ここにいた。
