富永啓生(レバンガ北海道)背番号30を背負いBリーグプロとしてのキャリアがスタート。
NBAを目指しネブラスカ大学を卒業、アメリカで過ごした6年間を経て富永啓生。NBAGリーグで磨きをかけてきた“天才シューター”が、ついに日本のトップリーグでその第一歩を踏み出した。
アウェイとなる名古屋ダイヤモンドドルフィンズとの開幕戦。故郷・名古屋で迎えた凱旋試合だったが、現実は甘くなかった。厳しいマークに遭い、3ポイントはわずか1本。それでも彼は、試合後の取材でこう語った。「悔しいです。でも、楽しさのほうが勝ちました。これが自分のスタートラインだと思っています。」
その言葉の奥には、アメリカでの経験が息づいていた。富永は桜ヶ丘高校卒業後に渡米し、ネブラスカ大学を経て、今年はNBA Gリーグのオールスターにも選抜された。そして夏のサマーリーグに出場したが、昨シーズンは世界中から集まるNBAを目指す選手たちがアピールするコートで存分なプレイタイムを得ることが出来なかった。体格もスピードも段違いの相手の中で、富永自身、通用するものと通用しないものを徹底的に見つめ直した時間となったはずだ。
求められたのは、シューターだけではなく“判断力”自ら状況を創るプレーヤー。
富永に打たせまいと徹底されるディフェンスは、ワールドカップ以降、対戦するチーム、選手たちのそれは顕著だ。夏に開催されたアジアカップでは、サマーリーグが終わったその足で日本代表にギリギリ合流し、ぶっつけ本番の試合。相手チームのガチガチのディフェンスに苦しんだ。だが、富永がそのフェイスガードをしてくる相手を一瞬かわして、スペースを作る。そして隙あればどんなタイミングでも打ちきる富永のオフェンスは脅威でしかない。
アメリカで彼が最も鍛えたのは「決断力」だ。打つのか、パスを出すのか、次の動きをどう読むのか。その瞬時の判断が、コートの流れを変える。「打つ勇気」と「打たない勇気」。その境界を見極める力こそが、今の富永を支えている。
帰国後、レバンガ北海道を新天地に選んだ理由を問われると、彼は迷わず言った。「自分を必要としてくれる場所で、もう一度挑戦したかった。」そして、東京オリンピックの3×3日本代表の監督でもあるトーステン・ロイブルHCは富永は「特別なシューターだ」と常々語るが、Bリーグで魅せる得点はスリーポイントだけではない。
GAME1では、富永啓生ほスリーポイントは11本中1本のみ。やっと入った瞬間、富永は自身を鼓舞した。富永がシュートを打つたびアリーナからの声も静まる。
徹底されたマークのなか外が入らなくてもドライブで切り込み、GAME2では20得点。チームを勝利に導くと、試合後には拳を強く握りしめた。3Pだけでなく、中距離・アタック・パス。その全てを融合させようとしている姿は、まさに新生“富永啓生”を感じさせるものだった。
そしてGAME2では、その金鱗が垣間見れた。得意のスリーポイントだけではない。1Qから積極的にペイントへ攻めてフリースローも獲得。この日の貢献度はチームハイの+23と前半からレバンガ北海道の勝利を牽引した。
ロイブルHCのいう“絶対的にエリートレベルのシューター”とは
試合後のロイブルHCに富永啓生の話をきくと、「今日の富永選手は3ポイントだけでなく、ペイントアタックやカッティングなど、違う形で得点を重ねてくれました。だから彼の3ポイントもまた入るようになると思いますし、絶対的にエリートレベルのシューターですから、確率も上がってくると思っています。
もう一つ、開幕GAME1と2を比較すると、ペースが全然違ったと思います。
GAME1ではチームとしてトランジションを含めてなかなか走ることができなかったんですけど、今日はしっかり走って、それも富永選手を先頭にレイアップなどでチームのペースを上げてくれた。それがGAME1との大きな違いで、3ポイントを決める以上にチームにとって大事なことだったと感じています。」
富永啓生選手と、今シーズンどんな1年にしていきたいですかの質問に対しても絶大なる信頼と期待がうかがえた。
「富永選手に対しては、やっぱり“彼を信頼する”ということが一番大事かなと思っています。
自分のキャリアの中でもいろいろなシューターがいましたけど、日本で言うと富永選手、ドイツだったらノヴィツキー選手。やっぱりシューターと言われる選手には、“いつでも打っていい”という信頼を与えないとシューターではないと思います。NBAのカリーやノヴィツキーもそうですが、シュートが入らない時期というのは必ずあります。それでもチームの武器の一つとして信頼し続けることが大切です」。
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