島根スサノオマジックはホーム・松江市総合体育館での試合が最後となる一戦。西地区首位の琉球ゴールデンキングスとのGAME2は、77-68で快勝した。通算成績は36勝22敗で、西地区2位が確定。チャンピオンシップ(CS)出場も決め、4,435人のファンが詰めかけた今季ホーム最終戦を勝利で締めくくった。
第35節 4/28 (日)
GAME2 松江市総合体育館 4,435人
島根 77-68 琉球
1Q 25-19
2Q 20-15
3Q 15-10
4Q 17-24
試合のターニングポイントとなったのは第3クォーターのディフェンスだろう。琉球のアレックス・カークが欠場する中、島根はニック・ケイ、ジェームズ・マイケル・マカドゥ、エヴァンス・ルークの3人をビックマンで同時起用し、ゴール下で圧倒する。特にエヴァンスは前半だけで9得点を挙げ、ミスマッチを確実に突いた。守備では琉球を10得点に抑え、フィールドゴール成功率を25%に封じるなど、琉球の得意なリバウンドでも上回り、ゴール下ではチームディフェンスが光った。
攻撃面では、節目のB1通算500試合出場を迎えた安藤誓哉が1Qから躍動すると、3ポイント6本を含む26得点、4アシスト、4リバウンドと試合を支配した。「レギュラーシーズンで琉球に勝ち越せていなかったので、今日はどうしても勝って終わりたかった」と語った安藤は、第3Q序盤の10-0ランでリードを一気に広げた。CS出場を決めた今、視線はその先に向かう。「優勝するためにやってるので、それだけですよね。昨シーズンは出られなかった。だからこそ、今年は“ちゃんとやりたい”。本当に、ちゃんとやりたいって感じです」と、率直な言葉で意気込みを語った。
そして、北川弘がベテランとしてチームを鼓舞する。プレイタイムの有無に関わらず常に準備を怠らず、今季もフル出場を続けてきた。「チームのために何かできることがあれば何でもしたい」と話す北川は、第3Qの終盤に琉球の反撃ムードを断ち切る3ポイントを決めるなど、存在感を発揮した。11得点2アシストの活躍で勝利に貢献した。「ポジティブな声かけを意識してきました。でも時には言いたくないことも言わないといけない場面もある。そんな時はニックらが支えてくれました」と語るように、チームの結束力が試合を通じて感じられた。
琉球を上回る高さとフィジカル、そしてペイント内での得点は34対22と圧倒。
島根は持ち味を存分に発揮し、CSに向けて弾みをつけた。
最終節は5月3・4日にアウェイで広島ドラゴンフライズと対戦。CS初戦は5月9日から始まる。
北川弘(島根) ホーム最終戦後Jbasketインタビュー
安藤誓哉キャプテン(島根) ホーム最終戦後Jbasketインタビュー
高さと結束、そしてエース安藤誓哉の活躍が光る勝利だったが、これまでの勝利の裏にある「陰の力」にも、静かに熱い視線が注がれる。それは、選手でもなく、試合に直接出るわけではないがチームの誰もが「必要不可欠」と口を揃える存在、島根スサノオマジックの“縁の下の力持ち”たちだ。
今節GAME1のゲームハイ23得点でチームを牽引した津山尚大、オーストラリア代表で、オールラウンダーのニック・ケイ夫妻から聞くことができた。
田中良拓マネージャー
田中マネージャー「自分は選手より年上なので、距離を縮めて、何でも話せる存在でいたい。聞きにくいことも、自分なら聞いてくれる。だからこそ、自分なりに誠実に答えてきたつもりです」4年間、常にチームの“今”に向き合い続けた田中マネージャー。“当たり前”に尽くすその姿は、選手たちにとってかけがえのない支えとなっている。
津山尚大「兄貴のような存在。バスケ以外でも常に支えてくれた。島根に来てから3年間、ずっとそばにいてくれた。選手とスタッフというより、親友に近い。そう語るのは津山尚大。互いに信頼し合った絆があった。
印象に残るエピソードとして、津山が笑顔で話してくれたのは4月16日の誕生日の夜、遠征先で、「1人でラーメン行こうと思ったら、ロビーで洗濯終わりのよしさん(田中マネージャー)に会って。疲れてるはずなのに“誕生日にお前1人でラーメン食わせるか!”って一緒に来てくれた。本当に優しい人」と、何気ない行動に込められた温もりを噛みしめた。そして、苦しい時期、終盤戦でなかなか勝てなかった頃、田中マネージャーは静かに声をかけた。「誓哉がいない時間帯は尚大が思ってるほど悪くないよ。尚大は尚大らしく思いっきりプレーしたら? 誓哉になろうとしないでいいんじゃない」その言葉が、どれだけ心を軽くしたか。今でもふと、思い出す言葉だとして津山は言う。
田中マネージャーは元選手だ。だからこそ、選手の心の揺れやプレッシャーの重さも理解していた。
金城実希マネージャー
ニック・ケイ夫妻との絆
異国の選手たちの「家族」になった女性スタッフ
スサノオマジックで唯一の女性スタッフである金城マネージャーは、主に外国籍選手とその家族のサポートを担当する存在。彼女がいなければ、今のチームは成り立たなかったかもしれない。特に印象的なのが、ニック・ケイの奥さんの妊娠・出産を全面的にサポートしたエピソード。病院の予約から通訳、通院、付き添いまで、全てを担った。ケイ夫妻は「どこへ行っても彼女についてきて欲しい」とまで語る。
金城マネージャーが心がけていたのは、ただの翻訳ではない。「その選手の心になりきって、彼ならこう言うだろうと考えながら伝えてきた」と語り“心を訳す通訳”だった。選手たちも彼女の存在に信頼を寄せる。「気が利くし、報連相もしっかりしてる。細かいところまで本当に見てくれている。英語力だけじゃない、女性目線での気遣いがありがたい」との声も。チームの“クッション役”として、自らの立場を最大限に活かして戦い続けている。彼女もまた、島根を支えるスペシャリストのひとりだ。
会場を熱狂に染めるMC 🎤HONSHOW
マイク一本で描く、島根の鼓動、試合開始前の静寂を打ち破る、エネルギッシュな声。「皆さん準備はいいですかああああ!」その声を聞けば、会場のボルテージは一気に最高潮へ。それがMC HONSHOWの力だ。ただ叫んでいるわけではない。選手ひとりひとりの人柄や今の状態を把握し、試合展開に応じて言葉を選び、会場の一体感を演出する。ファンにとっては「彼の声があってこそスサノオの試合」という声も少なくない。HONSHOW自身も「試合は選手だけのものじゃない。応援する全員が一緒に戦っている。それを言葉でつなげるのが自分の役目」と語ってくれた。歓声と拍手の交差点にいる、声の職人。その声は、島根の魂そのものだ。
すべての“チーム”がひとつになったシーズン
マネージャー、MC、フロントスタッフ、ボランティア、グッズ販売、チケット担当、ブースター、スポンサー。今季のスサノオマジックは、選手だけでなく全てが「チーム」が一丸となって走ってきた。だれもが、自分の役割に誇りを持ち、目の前の仕事に“覚悟”を持って臨んでいた。それが、この勝利につながっている。
「優勝するためにやっている。それだけです」と語る安藤誓哉の言葉が、今のチームのすべてに関わる人の言葉ともリンクする。
今季の主役は、選手たちだけじゃなく、支える者すべてが、主役。そして今、島根スサノオマジックは“チーム全員で”優勝を目指している。